説明と理解

説明文には2つの種類があるのをご存知だろうか。

長尾 真の著書  『わかる』とは何か  にはこのように書かれていた。

 
 

『記述』と『説明』

  1.  富士山は日本で一番高い山である
  2. 日周運動は地球の自転によって起きる見かけの運動である
  1の文は説明の中でも『記述』と呼ばれるもので、事実を述べた文である。
2の文は厳密な意味での『説明』で、なぜそうなるのかを述べている。
 
厳密な意味での『説明』は物事がなぜそうであるのか、という根拠を示すことであるとされる。
 
簡単に言えば、何故そうなるのか、という疑問に対しての答えが厳密な意味での『説明』なのである。
 
これに対して『記述』には何故そうなるのかという疑問に対する答えはない。
 
 

知識の種類

彼は続けて知識にも2つの種類があると述べている。
 
・記述的知識
    知識という言葉を使うときはこの意味で使うことが多い。言葉の意味や物事の性質を表すもので、○○は△△である。という記述がそうである。
 
・演繹的知識
    自然科学で用いられる各種の原理や法則はこの演繹的知識に分類される。性質に関する事柄であっても、なぜ○○なのか?という問いについての答えは演繹的知識に属する。演繹的知識は抽象化されたもので、なるべく多くの場合に適用できることが望ましい。
 

他人に理解してもらうには

私は塾講師のバイトをしているので、生徒に説明をして理解してもらう機会が多い。
 
生徒に物事を説明するときは、教えようとする知識が『記述的知識』なのか『演繹的知識』なのか理解しておく必要がある。
 
記述的知識を説明するときには、『記述』をして生徒に理解してもらい、覚えてもらうしかない。『記述』は共通のルールであり、受け入れなければならないからだ。
 
演繹的知識を説明するときには、『説明』をして生徒に理解してもらう必要がある。演繹的知識は【何故そうなるのか】に対する答えであるので、現象を取り上げてからその答えとなる知識を『説明』するのが望ましい。
 
機会があれば、人が理解する過程についても詳しく知ることが出来たら良いなと思う。